2012年

2月

20日

もうひとつのがん難民

 

【がんは国民病】

 平和で栄養状態が良く、衛生的な環境に暮す日本国民は、過去類例のない長寿を享受しています。
かつては脱水や栄養不足、感染症が多くの人の命を奪いましたが、長寿化と医学の進歩とにより疾病構造が変化し、悪性腫瘍(がん)や虚血性心疾患、脳血管障害が死因の上位を占めるようになりました。とりわけ悪性腫瘍(がん)は、死因の約3割を占めており、その早期発見・治療はもちろん、先進的治療や新薬の動向は、国民的関心と言っても過言ではありません。


【がん難民とは】 

 ここ数年、「がん難民」というセンセーショナルな言葉が、新聞や週刊誌、テレビニュースで散見されるようになりました。
「がん難民」の内容にはかなりの幅がありますが、概ね、治療に納得の行かない人達、満足ながん治療を受けられぬ人々を指すようです。
「ドラッグラグで世界標準薬が使えない」「高額な先進医療を受けられない」
「がん治療の地域格差がある」「どこで治療を受ければ良いか分らない」
といった悩みが、しばしばメディアに取り上げられています。


【名医、国手といえども・・・】

 では、ドラッグラグが無くなり、先進医療の恩恵が遍く行き渡って、地域格差が解消したならば、「がん難民」は居なくなるのでしょうか?
これらの悩みは、どちらかといえば、積極的ながん治療を受ける人々の抱える悩みです。完治すべく、最善を尽したい人々の切なる願いです。それが切実なのは論を俟ちません。
 しかし薬石効なく、病に抗しきれぬ時が人には必ずやって来ます。
手術は出来ない。抗がん剤も放射線療法もやり尽した。先進医療の適応もない。もはや手の打ちようがない。この病院で出来ることはもうありません。
後はよその病院で緩和医療を受けて下さい。そう言われる時が来ます。最高の設備を持ち、名医・国手を揃える病院でも、治せないものは治せないのです。


【もう一つのがん難民】

 その時、ドラッグラグや先進医療とは違った悩みが頭を擡げてきます。
「もう助からないのか?」
「病院から見放されてどうすれば良いか分らない」
「緩和医療って何?」「あとどれくらい生きられるの?」
「痛みに苦しめられるのか?」「この後、自分はどうなってしまうのか?」と。
積極的な治療を受けていた時とは異なる苦悩に直面するのです。そんな深い悩みに寄添い、苦痛を緩和する医療制度は、残念ながら十分とは言えません。不幸にして積極的治療が奏功しなかったとき、深刻な悩みと不安とを抱えたまま、多くの人々が大病院を後にするのです。「もう一つのがん難民」として。

今回のメディカフェでは、「もう一つのがん難民」について、皆さんと話合いたいと思います。

 

西岡 誠(医師、メディ・カフェ@関西)

 

 

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